応用演劇とAAPS
簡単な応用演劇に関する説明と
AAPSが行う演劇ワークショップの効果や目指すこと
応用演劇ってなんだろう?
皆さんは「演劇」と聞くと、どんなものを想像しますか?
台本があって、役者が舞台で演じているその作品そのものだったり、
その作品を観に行って楽しむことだったり。
もしくは、小さい頃、学校の発表会などで、自分が演技をする側になって
「演劇」をする体験をしている人もいるかもしれません。
「応用演劇」とは、そういった演劇のさまざまな要素を少しづつ抜き出して、演劇という専門性の外側にある場(教育や企業、医療、介護や障害者施設などの福祉現場や刑務所等)で、その目的や効果を期待して活用される、演劇的手法を用いた参加型の体験活動(ワークショップ)の総称です。
1920年頃に発生したとされる応用演劇は、アメリカではクリエイティブ・ドラマ、イギリスではDIE(ドラマ教育)として展開し、1950年代ごろから各地で急速に発展、学校教育の場での実践も数多く行われ、教科として「演劇」が存在するようになりました。
そして、研究家や実践家は様々な呼称で目的や方法論の異なる実践を行っており、日本には、演劇教育、表現教育、ドラマ教育(DIE)からTIE、クリエイティブドラマ、プロセス・ドラマ、アプライド・ドラマ、フォーラムシアター、ドラマセラピーなど多様な呼び名の実践形態が存在しています。
このように具体的な活動は異なっていても、それらの「応用演劇」に共通して言えることは、上演・発表を目的として行なわず、過程を重視した体験活動であるということです。 *必要に応じて発表形式をとる場合もあります
私たちの行う「演劇ワークショップ」
応用演劇には、セラピー・心理療法的に用いるものも含まれますが、私たちAAPSが行う「演劇ワークショップ」は、教育的・社会的目的で行う活動が中心で、参加者が自ら感じ、考え、想像し、関わり、そして創造し、振り返るといった一連の過程を重視し、その中での気づきや学びを大切にする集団活動が主になります。
そのため、その活動の中で遊びながらも、目的を見失わずに演劇的環境や進行を紡ぎ、問いかけ寄り添う人=ファシリテーターの存在が重要となります。
具体的な活動は、俳優が実際に稽古で用いているシアターゲームなど、演劇という枠組みを利用した様々な身体や言語表現活動で、それらを集団の中で即興的、または、話し合いながら進行していきます。
そこには、いわゆる俳優に求められる「上手い下手」などは存在せず、「失敗」や「間違い」と思えるような事も生かし合うことで、全てが私たちととって必要な発見や学びとなっていきます。そういった過程の中で、自らの表現への躊躇や垣根が外れ、なんでもやってみる(チャレンジする)喜びが芽生えていきます。
そのような活動の場となるために、参加者が安心安全な環境であるとその場を信頼できるよう、心と身体をほぐし、互いを受け入れ楽しむことから、演劇ワークショップはスタートします。
どんなチカラがつくのだろう?
私たちは、こどもから大人まで、さまざまな人を対象に、演劇ワークショップを行います。「生きるための練習」とも言える演劇ワークショップは、その時々で、テーマや目的に合わせた活動を行うことが可能です。
特に、こどものワークショップではコミュニケーション能力の育成が、企業研修などではチームビルディングなどの要素に注目が集まる演劇ワークショップですが、具体的には、以下のようなチカラがつくと考えられています。
・想像力・・・自由な発想と他者を思いやることができるチカラ
・思考力・・・深く考えるチカラ
・創造力・・・イメージを形にするチカラ
・協働力・・・仲間と協力するチカラ
・挑戦力・・・何事も一歩踏み出すチカラ
その他、集中力養ったり、身体感覚を鋭敏にしたり、仲間との信頼関係を築いたりするチカラも、活動を通して自然に実感できることでしょう。
具体的な例を出して、考えてみましょう。
「ミラー」というシアターゲーム(演劇的手法を用いた活動)があります。
ペアになって向かい合い、一人が人間、もう一人が鏡の中に写っている像として向き合います。人間(リーダー)の動きを、像であるもう一人は真似をしていく、そんな単純なゲームです。
人間(リーダー)が動き出します。
鏡の像である人にはどのような意識が働くでしょうか?
そして、動き手であるリーダーには?
マネするために、じっくりと観察します(集中力)
自分の動きとは異なる動きをする相手に、それぞれに異なる体と考えを持っていることを体感を通して気づきます(感覚と思考力)
また、相手がついてこれるスピードにしようと考えたりする気遣い(想像力)
逆に、わざとついてこれないような動きを創り出してみたり(創造力・挑戦力)
そして、互いに呼吸を合わせることができた一体感(信頼・協働力)
ファシリテーターは、その目的に合わせて活動の声掛けを変え、参加者が注目するポイントへの気づきを促します。
自分に向き合えば、活動を通して、自分の身体、思考、感情の特徴をより深く知ることができます(自己理解)
同様に、その視点を他者に向けることもできます(他者理解)
私たちは、誰として同じ人はいません。
皆それぞれに、実に多様で、豊かで、刺激的です。
まず何より、自分を大事に、楽しんでみてください。
自分を知ることは他者への理解に繋がります。
その理解は、関わりの中で、個から集団へと広がるでしょう。
すべての人が 輝く社会へ
演劇には、人が持っている感性・五感や、身体、言語、思考などを、細部まで深く探求する要素があり、演劇創作の過程は、他者との関わりが必要不可欠です。
俳優がそのような感性を磨き上げる稽古や創作過程には、人が豊かに生きるために必要なヒントがたくさんありました。そこに注目して、このように演劇を応用することの可能性や有効性が、さまざまな場での実践を通して示されてきたのです。
「演劇ワークショップ」は、非日常の場として安心安全な枠組を作り出し、日常生活ではなかなかできなかった行動や想像を形にし、「やってみる」体験の機会を可能にします。そこで、普段の生活では気づけなかった自分の魅力や他者の魅力、関係性を発見し、参加者は実生活をより豊かにするきっかけを得るでしょう。
さらに、集団だからこその難しさと楽しさの体験を通して得られた信頼感は、実社会において、多様な人間関係の中を生きる私たちに、互いを活かして生きるヒントとチカラをもたらしてくれる事でしょう。
日常生活は、止めることのできない連続体です。
私たちは日々、自分たちの置かれた環境、関係性の中を生き続けていきます。
回り続けている日常の中で、新しい行動をとったり、視点を変えることは、とても難しいし、また勇気がいることです。
ぜひ、演劇ワークショップの環境を利用してみてください。
この体験の先には、今とは違った未来が待っているかもしれません。
すべての人が輝く未来ために。
それが、AAPSの演劇ワークショップ(応用演劇)です。